家庭料理の復活と言ってもよい現象かもしれません。フードサービス業界は近年着実に成長を続けており、2028年までに280億ドル(約4,340億円)規模に達すると予測されています。
意欲的な起業家や、自慢の料理を世界に届けたい才能あるシェフにとって、市場はフードサービス事業に大きなチャンスを提供しています。
この記事では、ゼロから始めて、独自性と品質を兼ね備えたフードサービス事業を立ち上げる方法をご紹介します。
フードサービス事業の始め方
- 事業設立と許可取得
- シェアキッチンのスペース確保
- ニッチの選定
- 仕入先の確保
- フォーマットの選択
- パッケージングの効率化
- 配送パートナーの確保
- 高品質な写真撮影への投資
- ECストアの構築
- マーケティング戦略の策定
- 顧客フィードバックに基づく改善
レストランやベーカリー、フードサービス会社など、あらゆるフードビジネスでは、仕入先や流通業者のネットワークに加え、料理の下準備や調理を行うための信頼できるスペースが必要です。ここでは、フードサービス事業を軌道に乗せるために必要な要素と関係者を紹介します。
1. 事業設立と許可取得
フードサービス事業の立ち上げには、一般的な起業と共通する基本的なステップがあります。
ただし、食品を扱う事業であるため、フードサービス事業の許可取得プロセスはより複雑になる場合があります。営業許可や雇用者識別番号に加え、食品取扱者免許、保健所の許可、安全規制への準拠などが求められることがあります。
具体的な規制は自治体によって異なるため、お住まいの地域の要件を確認してください。場合によっては(例えば東京都内でフードサービス事業を始める場合)、これらの証明書や許可を取得するために講習の受講が必要になることもあります。また、検討している共用キッチンや食材仕入先、流通業者が満たしている安全基準についても確認しておきましょう。
2. シェアキッチンのスペース確保
自宅キッチンでの営業は、条件に限って認められる場合がありますが、販売する食品の種類や販売方法などについて細かな規定があります。例えば、菓子製造業などの営業許可の取得や、製造場所の表示など、自治体のルールに従う必要があります。
コミッサリーキッチン(シェアキッチン)と呼ばれる商業用キッチンでは、大量調理に必要な設備や十分な冷蔵・保管スペースが整っていることが多く、効率的に食事の準備を行えます。施設によっては料理教室や対面イベントを開催できる場合もあり、新規顧客の獲得やブランド認知度の向上につながる可能性もあります。
多くのキッチンでは、利用を開始する前に営業許可などの取得が求められますが、手続きについてサポートを提供している施設もあります。トルティーヤ製造機や大型フードプロセッサーなど、必要な設備をあらかじめリストアップし、それらを利用できるキッチンを探しましょう。
3. ニッチの選定
たとえ地域で唯一のフードサービス事業になる場合でも、特定のニッチに焦点を当てることをおすすめします。例えば、ターゲット顧客(子ども向けの健康的な食事を求める忙しい家庭など)、市場の隙間(手頃な価格の日常的なランチなど)、あるいは特定の料理ジャンルの専門性を明確にしましょう。ニッチを定めることで、マーケティング戦略を洗練させ、どのような顧客層に向けた事業なのかを明確に示すことができます。
商品ラインナップを絞り込むことで、幅広く平均的なメニューを提供するよりも、少数の完成度の高い料理に集中してマーケティングできます。例えば、朝食用スムージー、こだわりのランチ、イタリアンディナーを同時に販売するよりも、イタリアンディナーに特化したラインナップを開発し、販売する方が取り組みやすい場合もあります。
4. 仕入先の確保
メニューの内容や変更頻度に応じて、複数の仕入先から食材を調達することになるでしょう。季節によって仕入先を使い分けることもあります。例えば、春や夏は地元の農家から仕入れ、オフシーズンには卸売業者やスーパーマーケットを利用するといった方法です。特定の料理のために特別な食材を調達することもあるでしょう(ラザニアやピザに使う地元ブランドのモッツァレラチーズなど)。それ以外の食材は、手頃な価格の卸売商品を利用する場合もあります。
調理済み食品以外の商品展開を考えている場合は、他のShopifyブランドと連携し、キッチン用品や特製食品などの補完商品を取り扱うことも可能です。
予算や事業のビジョンに合った仕入先の組み合わせを見つけましょう。健康・安全基準、価格設定や最小注文数量(またはまとめ買い割引)、注文や配送の信頼性などを確認することが重要です。品質を確かめるために複数の仕入先を試すことも検討してください。料理の出来栄えは食材の品質に大きく左右されるため、できるだけ質の高い食材を選ぶようにしましょう。
5. フォーマットの選択
フードサービス事業にはさまざまな提供スタイルがあります。スケジュールや事業計画、ターゲット市場のニーズに合った方法を選びましょう。主な選択肢は次のとおりです。
食材キットか調理済みの食事か
分量調整済みの食材とレシピを提供する、未調理または下準備済みのミールキット形式を採用することもできます。一方で、忙しい生活でも手軽に食べられるように設計された、調理済みで分量調整された「温めるだけ」の食事を提供する方法もあります。
定期購入かオンデマンド注文か
定期購入モデルは需要を予測しやすく、傷みやすい生鮮食品を扱う事業にとって大きな利点があります。必要な食数や調理のタイミングが事前にわかるため、適切な量の食材を発注できます。
ただし、新しいブランドが新規市場で定期購入者を増やすには時間がかかる場合があります。一方、オンデマンドでの注文方式は新規顧客を獲得しやすい可能性がありますが、短期間で食材を調達する必要が生じることもあります。
店頭受け取りか配送か
業用キッチンからの当日受け取りを可能にする方法もあれば、自社または第三者の配送サービスを利用して顧客に直接届ける方法もあります。
ただし、食事の配送は一般的な商品の配送よりも注意が必要です。フードサービスの配送を行う場合は、冷蔵や冷凍の管理を考慮し、調理済みの食事が適切な状態で安全に運ばれるようにしましょう。
6. パッケージングの効率化
キッチンから顧客の食卓まで食事を安全に届けるには、適切なパッケージングが欠かせません。店頭受け取りの場合でも、フードデリバリーサービスと連携する場合でも、断熱性のあるクーラーバッグ、保冷剤、丈夫な容器などが必要になることがあります。漏れや温度管理に配慮することで、顧客が安心して食事を楽しめる状態で届けることができます。
ミールキットを提供する場合は、調理方法や再加熱の手順、レシピを同封しましょう。包装された加工食品を販売する場合は、食品表示法に基づき栄養成分表示などの表示が必要になります。ブランドが健康志向やフィットネス向けの食事を重視している場合は、栄養情報を分かりやすく記載することも検討するとよいでしょう。
また、「砂糖不使用」や「低糖質」など、健康や栄養に関する表示を行う場合は、食品表示基準に基づいた条件を満たす必要があります。表示内容が基準に適合しているかを確認し、正確な情報を提供することが重要です。
栄養Proなどのサービスを利用すると、栄養情報の作成やラベルの印刷を効率化することもできます。
7. 配送パートナーの確保
多くの配送パートナーは、Uber Eatsなどと同様のビジネスモデルを採用しており、ドライバーが地域内での集荷と配送を行います。顧客の数や所在地に応じて、特定の日に自分で食事を配達することも可能です。
配送範囲が広がってきた場合は、ヤマト運輸や日本郵便などの配送業者を利用して発送することもできます。
8. 高品質な写真撮影への投資
古代ギリシャの哲学者エピクロスは、食の楽しみを語り、多くの美食家に影響を与えた人物として知られています。そして、「人はまず目で食べる」と最初に記したのは、1世紀のローマ人アピキウスでした。フードサービス事業でもこの考えは同じです。高品質なビジュアル素材や、カラフルで明るい商品写真を用意し、料理の魅力がしっかり伝わるようにしましょう。
料理写真には特有のポイントがあるため、技術的な面で難しさを感じる場合は、自分のビジョンを形にできるプロの写真家に依頼することも検討してみてください。
9. ECストアの構築
フードサービス事業の計画が整い、レシピが完成し、食材の注文も済み、地域での営業許可も取得できたら、次は食事を紹介し、顧客が簡単に購入できるECストアを構築する段階です。Shopifyなどのプラットフォームを利用すれば、価格や食材などの情報を簡単に編集でき、必要に応じて商品ページやレイアウトも手軽に更新できます。
優れたウェブサイトを作るために、いくつかのポイントを押さえておきましょう。ブランドアイデンティティに合ったウェブデザインを採用し、商品カテゴリーを作成してナビゲーションを分かりやすくします。また、各メニューには魅力的な説明文を用意することも大切です。
スムーズなチェックアウト体験を提供し、顧客に人気のある支払い方法に対応しましょう。さらに、ECストアがGoogleの検索結果に表示されるよう、サイトの文章には検索エンジン最適化(SEO)の基本を取り入れておくことも重要です。
一般的に、優れたECサイトのコンバージョン率は3%以上とされています。ただし、サイトを公開したばかりの段階で数値が低くても心配する必要はありません。無料の食事を提供するキャンペーン、コールトゥアクション(CTA)ボタンの追加、ページの読み込み速度の改善などの施策によって、売上の向上を図ることができます。
10. マーケティング戦略の策定
顧客はECストアで簡単に注文できますが、どのようにしてサイトへ誘導し、購入につなげればよいのでしょうか。さまざまなマーケティング施策を活用することで、潜在顧客を引きつけ、セールスファネルを通じて購買へと導くことができます。最良の結果を得るためには、複数の戦略やチャネルを組み合わせて活用しましょう。
例えば、SNSマーケティングの一環として料理のチュートリアル動画を投稿することが考えられます。コンテンツマーケティングとして、ブランドの誕生ストーリーをブログで紹介するのもよいでしょう。さらに、メールやSMSマーケティングを活用して、セールや割引情報を顧客に知らせることもできます。さまざまなコミュニケーションチャネルで一貫したブランドボイスを保ちつつ、オーディエンスに響くコンテンツを見つけるまで新しいアイデアを試してみましょう。
地域密着型のフードサービス事業を展開している場合は、チラシや新聞広告などの印刷媒体の活用も検討できます。地元のファーマーズマーケットやクラフトフェアでポップアップ出店を行い、潜在顧客に料理を試してもらうのも効果的です。
11. 顧客フィードバックに基づく改善
固くなったパンのように、ビジネスを時代遅れのままにしておきたくはありません。では、メニューを調整したり価格を変更したりする際に、顧客がどのように反応するかをどのように把握できるでしょうか。また、新しくデザインしたパッケージや商品ページを顧客が気に入っているかどうかは、どうすれば確認できるでしょうか。そのためには、顧客からフィードバックを集めることが重要です。
顧客フィードバックを収集する方法は複数あります。
- ソーシャルメディアとレビューサイト:ビジネスのソーシャルメディアページに寄せられたコメントやダイレクトメッセージを確認し、各プラットフォームでのブランドへの言及をチェックしましょう。また、Googleなどの口コミを確認することで、人々がオンラインであなたのビジネスについてどのように評価しているかを把握できます。
- 顧客フィードバック調査と投票:ビジネスの特定の側面について顧客がどう感じているかを知りたい場合、アンケートや投票は有効な方法です。メールやテキストメッセージで顧客に調査を送信したり、ECサイトに組み込んだりすることもできます。
- フィードバックウィジェット:ウェブサイトに表示されるポップアップ形式のフィードバックツールは、短く簡単に回答できるのが特徴です。ユーザーは数回クリックするだけで回答できるため、回答率が高くなることがあります。Shopifyではさまざまなフィードバックアプリが提供されています。
顧客フィードバックの収集と対応は継続的なプロセスです。ビジネスを成長させていく中で、顧客の声を継続的に把握し、改善に活かしていきましょう。
フードサービス事業の事例:Eat Well Nashville
Eat Well Nashvilleは、忙しい日々の中でも顧客が健康的な食事をとれるようにすることを目的に始まりました。
「私たちが求めているものを提供してくれる会社は本当にありませんでした。さまざまなサービスや全国規模のサービスを試し、CSAも利用しましたが、十分に便利なものはなく、商品品質の面でも満足できるものがありませんでした」と、共同創業者のSpencer DonaldsonはShopify Mastersポッドキャストのエピソードで語っています。「私たちは、電子レンジやオーブンで温めるだけで食べられる、クリーンな食材を使った健康的な食事を探していました。」
SpencerはShopifyのストアを立ち上げ、独自のニッチを見つけました。Eat Well Nashvilleは当初、健康的なレシピを求めるフィットネス志向の人々を主なターゲットとしていました。しかしSpencerによると、そのメニューは玄米と味気ない鶏肉が中心で、やがて顧客が飽きてしまったといいます。
そこでSpencerとチームは継続的に顧客からフィードバックを集め、それに基づいて商品を改善していきました。
「私たちは顧客調査に非常に力を入れていました」とSpencerは言います。「その結果、注文している人たちは必ずしもフィットネス業界の人やクロスフィットをしている人だけではないことがわかりました。忙しい経営者や、家族がいて時間があまりない人など、もっと大きな市場があることに気づいたのです。そこで一度立ち止まり、健康的でありながら美味しいレシピをどう作るかを考え直しました。」
同社はメニューの味のバリエーションを改善し、スパイスを効かせたレシピを取り入れることで、より美味しい食事を提供するようになりました。また、その魅力を伝えるために料理写真にも力を入れました。
「料理が魅力的に見えなければ、たとえ味が良くても注文にはつながりません。盛り付けは私たちにとってとても重要でした」とSpencerは語ります。「色合いにもとてもこだわっています。良い照明のスタジオを整えることが鍵でした。」
さらにSpencerとチームは、多くの企業が見落としがちな質問にも目を向けました。それは「顧客はどのような方法でマーケティングされたいのか」という点です。
「注文締切日までに注文するのを忘れてしまう人が多かったため、テキストメッセージでの通知を望む声が多くありました」とSpencerは言います。
Spencerのストーリーは、フードサービス事業を始める起業家にとって重要な教訓を示しています。それは、顧客がどのように食事を自分の生活に取り入れたいのかを理解し、それを実現することです。Eat Well Nashvilleはその後、テネシー州のMy Vibrant Mealsに買収されました。
フードサービス事業に関するよくある質問
フードサービス事業を始める費用はどれくらいかかりますか?
多くのフードサービスのスタートアップでは、継続的な食材費、人件費(従業員を雇う場合)、パッケージング、配送、マーケティング、商業用キッチンスペースのレンタルなどの諸経費をまかなうために、約300万円〜700万円程度の資金が必要とされています。お住まいの地域で認められている場合は、自宅のキッチンを利用して小規模に始めることも可能です。フードサービス事業を始める総費用は、ターゲット市場、注文頻度、レシピの複雑さなどによって異なります。必要に応じて、中小企業向けの資金調達制度を利用することもできます。
自宅で小規模なフードサービス事業を始めるにはどうすればよいですか?
まず、お住まいの地域で自宅キッチンの利用が認められているか、また食品事業を運営するためにどのような免許や許可、登録が必要かを確認しましょう。必要な書類を準備し、食事の調理や梱包を行うための承認されたスペースを確保したら、食材やパッケージングを手配し、商品の魅力を伝える高品質な写真を用意します。その後、オンラインストアを立ち上げ、ビジネスのマーケティングを始めることができます。
フードサービス事業にShopifyのECプラットフォームを使用できますか?
はい。Shopifyを利用すれば、オンラインでフードサービス事業を運営し、注文の処理や配送・配達状況の追跡を簡単に行うことができます。





