「人生において唯一不変なものは、変化である」
古代ギリシャの哲学者ヘラクレイトスが残したこの言葉は、今なお本質を突いています。これはB2Bの世界においても例外ではありません。
B2Bは今、新たな時代を迎えています。その背景にあるのは、直感的で快適な購買体験に対する需要の高まりです。こうした期待を主に牽引しているのがミレニアル世代です。彼らはB2B領域において意思決定権を持つポジションに就くケースが増えています。
本記事では、なぜバイヤーがセルフサービスを好むのか、それが企業にどのようなメリットをもたらすのか、そして今日からどのようにセルフサービス戦略を始められるのかについて解説します。
B2Bバイヤーの61%がセルフサービス体験を好む理由
企業間の購買方法は変化しつつあります。2024年のガートナーの調査によると、B2Bバイヤーの61%が営業担当者と話さずに購入したいと考えています。
こうしたセルフサービス志向は、大口注文にも当てはまります。最近のマッキンゼーのレポートでは、バイヤーの39%が1回のオンライン購入で50万ドル(約7,750万円)以上を支払う意思があることが明らかになりました。
営業担当者は依然として重要な存在ですが、その役割は変化しています。バイヤーは複雑な購買においては専門家の支援を求める一方で、商品のリサーチやリピート注文、配送状況の確認といったシンプルな作業については、自分で完結させることを好みます。
ミレニアル世代がデジタルネイティブとして育ってきたことを考えれば、この変化は自然な流れといえます。彼らはインターネットとともに成長してきた世代であり、インターネットが閉鎖的な空間や無数のパスワードに支配されていた時代も知っています。
そして、インターネットがデジタル最適化され、UX主導で、グローバルにつながるエコシステムへと進化していく過程を目の当たりにしてきました。インターネットの成熟とともに、彼らの期待値も高まってきたのです。
B2Bの購買において、彼らが求めているのは次のような体験です。
- いつでも購入可能:営業担当者との調整をせずに、都合のよいタイミングで注文できること。
- 明確な価格と詳細情報:サポートに問い合わせることなく、価格や在庫状況を確認できること。
- より高いコントロール性:オンラインポータルを活用することで、注文の追跡、過去の購入履歴の確認、請求書の管理を簡単に行え、業務フローを効率化できること。
B2Bセルフサービスとは
B2Bセルフサービス(B2B自己管理型購買)とは、企業顧客が消費者向けサイトでの買い物と同じように、オンライン上で自ら購買を管理できる仕組みを指します。これには、初期のリサーチからリピート購入まで、好きなタイミングで完結できる一連の体験が含まれます。
最近のフォレスター委託調査によると、バイヤーの73%が、リアルタイムの在庫更新やワンクリックでの再注文など、B2Cで慣れ親しんだのと同様の便利なオンライン体験を期待していることが明らかになりました。
業界における最も大きな変化のひとつは、B2Bバイヤー向けのセルフサービス体験への移行です。直感的で効率化されたセルフサービス型のストアフロントは、この新世代の顧客を獲得するうえで欠かせません。なぜなら、彼らにとってそのようなショッピング体験は、すでに当たり前のものになっているからです。
B2Bセルフサービスと従来の営業モデルの違い
セルフサービスと従来の営業モデルの最大の違いは、営業担当者の関与度にあります。
- 従来のモデルでは、営業担当者が最初のデモから価格見積もり、注文確定に至るまで、購買プロセスのすべてのステップを主導する。
- B2Bセルフサービスモデルでは、バイヤーがプロセスを主導する。自分のスケジュールに合わせてリサーチを行い、仕様を決め、注文まで完了させる。
営業担当者が関与するのは、カスタムプロジェクトやコンプライアンスに関する質問など、複雑なケースでバイヤーがサポートを必要とする場合です。つまり、バイヤーが人とのやり取りを求めるタイミングで関与する形になります。
B2Bセルフサービスポータルに必要な機能
Eコマースは今やB2B販売者にとって主要な収益チャネルとなっており、バイヤーの73%が50万ドル(約7,750万円)以上のオンライン注文にも抵抗を感じなくなっています。これは、2022年の59%から上昇した数字です。
競争力のあるセルフサービス体験を提供するために、B2Bポータルに備えるべき主要な機能をご紹介します。
顧客アカウント管理
最近のマッキンゼーのレポートによると、B2Bバイヤーはアカウント管理や再注文において、セルフサービスチャネルを利用する傾向が強まっています。中央ハブとして機能するB2Bポータル上で自身の情報を管理できるようにすることで、バイヤーの利便性を高めると同時に、社内リソースの負担軽減にもつながります。
検討すべき主な機能は以下のとおりです。
- セルフサービスアクション: バイヤーが注文履歴の閲覧、過去の購入の再注文、アカウントのカスタマイズ、返品の開始を都合の良いときに簡単に行えるようにする。
- セルフサービスオンボーディング:ログイン前の新規顧客には申請プロセスが必要です。企業アカウント申請フォームを用意し、企業が情報を提出して承認を受けたうえで、B2B購買にアクセスできるようにします。
- スムーズなログイン:パスワードレスの顧客アカウント、Shopサインイン、またはサードパーティーのIDプロバイダー(シングルサインオン)と連携した自社認証など、シンプルかつ安全なサインイン方法を提供します。
- 会社プロフィール:複数拠点の情報や、特定の役割・権限を持つ担当者、支払い条件などのビジネス情報を、1つの会社プロフィールで一元管理できるようにします。
- セルフサービス機能:バイヤーが注文履歴の確認、過去の購入商品の再注文、アカウントのカスタマイズ、返品手続きの開始などを、都合のよいタイミングで簡単に行えるようにします。
🏅ケーススタディ:Filtrousは、BigCommerceからShopifyへ移行し、Shopifyのセルフサービス購買システムを導入したことで大きな成長を実現しました。注文頻度は3倍に増加し、毎週12時間分の手作業を削減することに成功しました。
リアルタイムの注文・配送追跡
注文状況が把握できないと、取引に摩擦が生じ、不要なサポート対応が発生します。バイヤーに常に状況の可視性を提供することで信頼関係を構築でき、サポートチームの負担軽減にもつながります。
少なくとも、セルフサービスポータルには以下の機能が必要です。
- 注文、支払い、フルフィルメント、配送状況をリアルタイムで確認できる注文ステータスページ
- 追跡リンクを含む、注文関連の自動メールまたはSMS通知
カスタム商品カタログと価格設定
B2B顧客ごとに取引条件は異なります。そのためポータルには、各顧客と合意した価格、商品カタログ、支払い条件などを自動的に反映する仕組みが求められます。
B2B Eコマースプラットフォームには、以下の機能が求められます。
- 顧客固有の品揃え:企業ごと、あるいは拠点ごとに専用のB2Bカタログを割り当て、表示する商品や価格を柔軟にコントロールできる機能。
- 段階的価格設定と数量ルール:ボリュームディスカウントを設定し、最小注文数・最大注文数・増分などの数量ルールをカタログ上で直接適用できる機能。
- 統合ストアフロント管理:DTCとB2Bの両方の商品提供を1つのオンラインストアで管理し、顧客セグメントごとに特定の商品を表示・非表示にできる機能。
🥇 ケーススタディ: スーパーフードブランドのLaird Superfoodは、電話による卸売注文をパスワードで保護されたShopifyポータルへ移行しました。この変更により、年間5万〜6万ドル(約775万〜930万円)の人件費を削減。さらに収益構成も逆転し、卸売が総売上の75%を占めるようになりました。これは、以前の25%から大幅な増加です。
自動化されたシンプルな再注文
リピート注文は迅速かつシンプルであるべきです。また、新規の複雑な注文であっても、できる限りスムーズに行える必要があります。B2Bポータルでは、カートを構築する複数の方法を提供することで、時間のかかる手作業を削減できます。
- シンプルな再注文:注文履歴にある「再購入」ボタンから、よく購入する商品をすばやく再注文できるようにします。
- クイックオーダーフォーム:必要な商品が明確なバイヤー向けに、SKUと数量を直接入力できるクイックオーダー機能を提供し、効率的に商品をカートへ追加できるようにします。
- 注文の下書き:バイヤーがカートに商品を入れ、注文の下書きとして保存・送信できるようにします。これは、カスタム見積もりの依頼や、注文確定前の社内承認プロセスにおいて重要な機能です。
- 柔軟な配送オプション:企業拠点の一覧から配送先を選択できるようにするほか、特別な配送が必要な場合には、チェックアウト時に一度限りの配送先住所を入力できるようにします。
統合された支払いと請求書管理
柔軟な支払い条件は、B2Bにおける重要な要件です。セルフサービスポータルでは、B2B向けの支払い条件を会社プロフィールに設定し、自動的に適用できるようにする必要があります。また、デポジット(前受金)の設定や請求書ステータスの追跡にも対応できることが求められます。
チェックアウト時には、バイヤーが以下を行える必要があります。
- 社内の会計・管理のために、注文へ発注書(PO)番号を追加する
- 取引を迅速化するために、会社プロフィールに安全に保存されたクレジットカードで支払う
さらに、バイヤーは顧客アカウントから請求書を閲覧・管理でき、支払い履歴や今後の支払期日を把握できるようにすることが重要です。
🥇ケーススタディ:オーストラリアのフレグランスブランドWHO IS ELIJAHは、8つの展開店舗全体でカスタム価格を導入しました。各地域が独自のカタログと価格マトリックスを持つ体制を整えた結果、国際卸売収益は前年比で50%増加しました。
B2Bセルフサービスがもたらす実証済みのメリット
セルフサービスはB2Bビジネスにとって大きな可能性を秘めています。しかし、多くの企業はいまだに変化に対応できないレガシープラットフォームに依存しており、その価値を十分に活用できていません。ここでは、セルフサービスがビジネスにもたらす主なメリットをご紹介します。
業務効率の向上
一見すると意外に思えるかもしれませんが、セルフサービスの導入は営業担当者により大きなレバレッジをもたらします。営業の役割をより戦略的なものへと進化させ、バイヤーの購買ジャーニーに自然に組み込むことができます。多くのバイヤーは購買プロセスの少なくとも一部をセルフサービスで進めることを好みますが、営業担当者は依然として重要な存在です。
主にセルフサービスを活用しつつ、必要に応じて対面や個別対応でサポートするハイブリッド型のアプローチにより、営業担当者は個々のバイヤーとより深く向き合う時間を確保できます。その結果、ミレニアル世代が重視する、信頼性のある本質的なコミュニケーションを実現できます。
Shopifyのようなプラットフォームを活用すれば、簡単な再注文機能や最新の商品・価格・顧客・注文データにアクセスできる環境を整えられます。これにより、営業担当者は適切なタイミングでバイヤーと関わり、取引を円滑に成立させることができます。
顧客満足度の向上
セルフサービスは営業チームだけでなく、バイヤーにも大きなメリットをもたらします。購買プロセス全体をより主体的にコントロールできるようになるためです。アカウント管理や注文、簡単な再注文、都合のよいタイミングでのサポート利用などが可能になります。その結果、売上の増加にとどまらず、顧客満足度やロイヤルティの向上にもつながります。適切なプラットフォームを導入すれば、迅速な対応と一貫したサービス体験を提供でき、信頼関係の構築にも貢献します。
また、パーソナライゼーションも重要なメリットのひとつです。あらゆる接点でバイヤーにとって自分ごととして感じられる体験を提供することは、優れた顧客体験の基本です。高度なセルフサービスポータルを活用すれば、それぞれのニーズに合わせた体験を設計でき、購買ジャーニー全体をより関連性が高く、効率的なものにできます。
より良い顧客データの取得
優れたコマース体験は、データとインサイトに基づいて成り立っています。セルフサービスの導入は、より質の高いデータ収集への道を開きます。精度の高いデータが得られれば、顧客の行動や嗜好に関する理解が深まり、その情報をもとにサービスの改善やニーズの予測、追加サポートが必要な領域の特定が可能になります。
Shopifyでセルフサービス体験を構築すれば、顧客関係管理(CRM)やエンタープライズリソースプランニング(ERP)、倉庫管理システム(WMS)などのツールとも容易に連携できます。これにより、テクノロジースタックを効率化しながら、より深く正確なインサイトを得ることができます。
コスト削減の指標
セルフサービスがビジネスの運用コスト削減にどのように貢献するかを考えてみましょう。顧客対応の直接的なやり取りを最小限に抑えることで、セルフサービス体験は業務効率を高め、注文から問題解決までのプロセスを効率化します。その結果、スタッフが各対応に費やす時間やリソースが削減され、より低いコストでより多くの顧客に対応できるようになります。
また、プロセス全体が直感的になることで、サポートや営業担当者はプラットフォーム上で解決できる問い合わせに時間を取られることがなくなります。その分、ビジネスの収益により大きな影響を与える戦略的な取り組みに時間を再配分できるようになります。
B2Bセルフサービスを成功させる実装方法
B2Bセルフサービスの導入方法はさまざまですが、ここでは自社の取り組みを検討する際の出発点となる、明確で実践的な戦略をご紹介します。成功に向けた重要なステップを見ていきましょう。
B2Bプラットフォームを選定する際には、カスタムソリューションを構築するのか、それとも既存のプラットフォームを導入するのかという重要な判断があります。Shopifyのようなプラットフォームを採用すれば、エンタープライズレベルのB2B機能を迅速に活用でき、開発にかかる時間やコストを大幅に削減できます。
プラットフォームを選ぶ際は、以下の点を確認しましょう。
- 拡張性:高度な開発者向けツールやB2B機能用のAPIを備え、ERPなどの基幹システムと連携できるアプリやパートナーの充実したエコシステムがあること。
- 統合への対応力:ShopifyのグローバルERPプログラムのように、主要なERPおよびCRMシステムと連携できる認定コネクタが用意されており、既存システムとのスムーズな統合が可能であること。
- 実証済みのセキュリティ:最新のPCI DSS準拠証明書など、セキュリティ基準への適合を証明できること。また、公開されたセキュリティプログラムを継続的に運用していること。
変革管理戦略
セルフサービスは営業チームにとって新しい取り組みとなるため、スムーズに適応できるよう支援することが重要です。変革を円滑に進めるためのポイントは以下のとおりです。
- 経営陣の賛同を得る:経営陣が新しいアプローチを明確に支持することが不可欠です。「営業担当者は複雑な取引を支援し、ポータルは定型的な注文を処理する」という方針を共通の指針として据えます。
- 役割とインセンティブの見直し:営業担当者の担当アカウントから発生するセルフサービス経由の売上にも報酬が反映されるよう、評価制度や報酬プランを調整します。
- チームへのトレーニング:企業プロファイルの設定、カタログの割り当て、顧客自身が決済できる下書き注文の作成など、新しいB2B機能の使い方を全員が理解していることを確認します。
- 測定と改善:ポータル経由の注文比率、再注文率、サポート対応件数などの主要指標を継続的に追跡し、得られたデータをもとに改善を重ねていきます。
B2Bセルフサービスの成功事例
Shopify B2Bを活用しているブランドは、卸売顧客に直感的なセルフサービス体験を提供することで、確かな成果を上げています。ここでは、いくつかの事例をご紹介します。
- 水着ブランドのKulani Kinisは、DTCサイトと同様に使いやすいB2Bストアフロントを立ち上げました。その結果、卸売顧客数は3倍に増加し、リピート注文も大きく伸びました。
- ペット用品会社のTella & Stellaは、卸売と消費者向け販売を一元管理できるカスタムB2Bポータルを構築しました。これにより、総売上は前年比23%増加し、小売パートナーにとっても注文プロセスが大幅に簡素化されました。
- HVAC大手のCarrierは、Shopifyを活用してB2Bサイトを従来より90%速く立ち上げ、コストも従来手法のわずか10%に抑えました。その結果、新市場への迅速な展開を実現しています。
Shopifyで最高のセルフサービスB2Bを実現
この記事はヘラクレイトスの有名な言葉から始まりましたが、もう一つの言葉もご紹介します。
「変化の中でこそ、進むべき方向が見えてくる」
B2Bの購買行動の変化を恐れるのではなく、それを前向きに捉えることが重要です。ここで紹介した戦略を優先的に実行することで、現代のバイヤーが求める理想的な購買体験の実現に着実に近づくことができます。
そして、その取り組みを私たちが支援します。
Shopifyは、実用性と拡張性を兼ね備えたプラットフォームでB2Bコマースを再定義しています。最適化されたバイヤージャーニー、直感的なセルフサービスポータル、そして既存の技術スタックとのシームレスな統合により、あらゆるコマースニーズを一元的に満たすことが可能です。
B2Bセルフサービスに関するよくある質問
B2Bにおけるセルフサービスとは何ですか?
B2Bにおけるセルフサービスとは、企業顧客が他社との取引を自ら管理できるようにする戦略を指します。このアプローチにより、注文の作成・管理、アカウント情報や請求情報へのアクセス、サポート対応、サービス内容のカスタマイズといった業務を、より簡単に行えるようになります。
B2Bセルフサービスの例にはどのようなものがありますか?
代表的な例として、小売業者がメーカーや卸売業者から在庫を仕入れる際に利用するオンライン卸売ポータルが挙げられます。ポータル上で商品を検索し、詳細情報や在庫状況を確認し、注文を行い、配送状況を追跡し、支払いを管理できます。これらの操作は、営業担当者と直接やり取りすることなく完結できます。
B2Bサービスとは何を指しますか?
B2Bサービスとは、企業間で行われる取引やサービス提供のことです。ある企業が、別の企業の業務運営や製造、再販に利用される製品やサービスを提供します。具体例としては、コンサルティング、法務、会計といった専門サービスのほか、製造、テクノロジー、物流などの業務支援が含まれます。
B2Bカスタマーサービスとは何ですか?
B2Bカスタマーサービスとは、企業間取引において一方の企業が他方に提供するサポートを指します。大口注文の管理、技術的な支援、物流対応、事業に大きな影響を及ぼす問題の解決など、複雑で専門性の高いやり取りが含まれることが一般的です。





